生きる言い訳

「なぜ生きるのか?」「いかに生きるべきか?」という問いに正面から挑戦する、哲学・倫理・思想ブログ

「否定的なもの」あるいは「存在の無」の謎

3.存在の無(1)自己再帰と自己意識

肯定的な弁証法? 我々はここまで、エンゲルスの自然弁証法のようなことをやってきた。つまり、量子論的な揺らぎ、偶然性がそのマクロな系においては統計的な物理法則という必然性をつくり出し、物理法則に従う諸々が構造と生命をつくり出し(量の質への転化…

2.合目的的器官(4)個体性と同一性

われわれは身体や道具その他の器官によって構成され、それによってまた種、社会、技術などのシステムに従属している。個体の論理は、器官の論理や種の論理に還元されてしまうように見える。ここで個体の実存はいかにして可能なのかということが大問題として…

2.合目的的器官(3)拡張的器官、道具、言語、技術

これまで生物の器官を主に見てきたが、器官をサイバネティックな情報システムと見なすことで、もはや境目なしに他の領域に移行できる。その射程には、人工的器官から社会現象まで幅広く含めることができる。 中でも今回は、道具、言語、技術について論じる。…

2.合目的的器官(2)情報システムとしての器官

器官が様々な物質によって伝えるのは、情報である。これが前節で得られた結論の一つであった。 この節では、こうした情報の考え方に全面的に依拠して器官に当たってみたい。情報は、十分に明快に定義されており、不適切なアナロジーによって理解を誤らせる、…

2.合目的的器官(1)器官と機能環

前章で我々は、全くの無から偶然によって宇宙が誕生し、因果律の盲目的な連鎖の中から構造が創発し、自らの維持再生産を目的とする合目的的構造すなわち生命が出現するまでを追った。 生命は具体的な生存戦略に沿った合目的的器官を有し、器官は遺伝子と自然…

1.創発(4)無からの創世と合目的性の発現

この節では、宇宙が誕生してから、合目的的器官すなわち生体が発生するまでの、歴史を紐解いていく。というのも「存在の無」を巡る議論の前提としては、ただ人間存在は物理法則と因果律に厳密に従って生きていると言うだけでは十分ではなく、それがいかなる…

1.創発(3)パターンと機能

パターンの生成と対称性の破れ 自己組織化は、それがなにによるものであろうと、対称性を破りパターンを生成する。というのも、自己組織化は、ミクロな要素の集合からマクロの状態が創発する過程だからである。 このうちパターンのほうは、前提条件からある…

1.創発(2)熱力学法則と自己組織化

熱力学法則の存在は、生命の存在をより不可解に見せる。生物は、熱力学法則に抗って成長し、生活し、繫栄する。さらに不可解なのは、そのような熱力学法則に抗う仕組みが、当の熱力学法則のもとで発生したことである。 科学の時代に入ってもなお、多くの人々…

1.創発(1) 必然と偶然

この章では、複数の微視的な相互作用から新たな巨視的構造が発生する「創発」について、生命の誕生と絡めながら明らかにする。問題を腑分けして創発の最小単位を解明し、人間の存在には何の超常的力も必要ないことを明らかにする。 「創発」はしばしばデカル…

序論:「否定的なもの」と自然科学の方法

否定性、存在の無、欠如、自身との最小限の差異……。 ヘーゲルおよびそれに影響を受けた(とくにコジェーヴのヘーゲル講義から影響を受けた)、サルトル、ラカン、ジジェクらの哲学において、こうした「否定的なもの」は重要な位置を占めている。というのもこ…