生きる言い訳

「なぜ生きるのか?」「いかに生きるべきか?」という問いに正面から挑戦する、哲学・倫理・思想ブログ

安倍晋三銃撃事件に対する緊急声明

1.いかなる殺人も許される余地はない。人命はアプリオリな価値であり、これは人間の世界の前提として要請される。安倍晋三氏の無事と速やかな回復を祈る。

同日22時50分追記:安倍晋三氏は同日午後5時3分に永眠された。ご冥福を祈る。

2.現時点では、犯人に対するいかなる非難、弾劾もできない。なぜならば、責任能力の有無が明らかでないからである。

3.政治家に対するこうした暴力は、民主主義と言論の自由の観点からも許されるものではない。政治家に対する暴力の傾向はここ数年で強まっており、強い危機感を表明する。我々はこの事件が最後だと考えてはならず、問題に対応する必要がある。

4.政治家に対する暴力のおおもとの原因は、議会政治の機能不全と信頼失墜にある。言葉の世界から排除された人々が、現実の暴力をもって社会に回帰するのは半ば当然のことである。我々は今一度、言葉の力を信じ、言葉による政治をつくりださなければならない。

5.問題を取り違えてはならない。我々の直面している状況は、日本社会の内在的な暴力なのであって、いかなる外的要因によるものではない。事件に便乗した排外主義、差別、陰謀論その他の言説は、問題の根幹を否認するための投影である。我々の社会は、何か特定の原因を取り除けば問題が解決するという次元にはない。

6.安倍晋三氏の受難は、彼が過去10年の間に行ってきた政治の結末にある。8年間も最高権力者たる総理大臣の座にあり、その後も隠然たる影響力を持っていた彼には、この問題をあらかじめ解決するための権力が備わっており、未来での銃撃事件を防ぐだけの治世を行い得た。しかし彼はそれをしなかった。権力には責任が伴い、理不尽なまでの権力には理不尽なまでの責任が伴う。

7.いかなる絶大な権力者も、因果応報の理から逃れた試しがない。いわんや一般市民においてをや。我々は、我々が平穏と安寧を得るためには、すべての人々に平穏と安寧がもたらされなければならないことを今一度確認する必要がある。その認識、我々は全人類に対して責任を負うという認識において、はじめて自己中心主義を打破し、分断に橋をかけ、民主主義を復権することができる。

 

以上